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【ドラム】脱力だけじゃない、表現力向上のための、力むというアプローチ

ドラムについて調べると、脱力というキーワードに自然と出会います。
知識が増えるにつれ、脱力=良、力み=悪、という認識を持つ人は多いと思います。

身体に大きな負担をかけないという意味では、その認識は正しいです。
しかし、表現という意味ではどうでしょう。
あなたが表現したい演奏に、硬さ・歪み・雑味、などのキーワードは不要ですか?
それらは、脱力というアプローチで表現できますか?

大切なのは、脱力と力みを使い分け、さまざまな音色をドラムから引き出すことです。
その使い分けについて、私なりの方法論を書きます。

目次

力むことのメリット① スティック剛性の向上

力むと、自然とスティックをギュッと握しめると思います。
スティックに当たる指の面積は増え、スティックの剛性が上がります。

これが一つ目のメリットです。

剛性の高いスティックで太鼓やシンバルを叩くと、剛性が低い場合に比べて、カツカツ・ゴツゴツした、硬い音になります。
初心者がドラムを叩いた時の荒々しさ、のような音を再現できます。
スティック剛性による音色の違いは、単純な音量の大小とは違うため、活用すれば演奏の表現力が大きく広がります。
バンドアンサンブルの中で自分の音が埋もれがちな人や、周りの音量に負けないように叩くとメンバーからうるさいと言われる人には、特に試して欲しいです。
上手く活用すれば、小さくて存在感のある音が出せます。

さまざまなグリップで、練習台を叩いてみたので、音色の変化を聞き比べてください。
・中指支点の脱力ストローク
・人差し指支点の普通ストローク
・スティックを握りしめた高剛性ストローク
の順に、2小節ごとに変化させています。

ストロークを変更する際に、つい音量の変化をつけてしまいましたが、音質が変化していることもわかると思います。
力んだ状態で叩くと、音量差だけではない、荒々しさのような表現ができます。

ちなみに力んだストロークの時のグリップを裏から見ると、こんな感じです。

全ての指でスティックを握りしめ、手とスティックが一つの剛体となるイメージです。
指はリバウンドを一切拾わず、手首から肩で連動してリバウンドを吸収します。
体はどこも痛くなりません。

力むことのメリット② 必死な雰囲気の演出

半分冗談ですが、半分本気です。
力んで一生懸命にドラムを叩く姿って、理屈では無い部分で観客の心を動かします。
リラックスした曲を力んで叩かれても興醒めですが、切実な雰囲気の曲を脱力したフォームでスイスイ叩かれても、何だかなぁという気分になります。
演奏者の雰囲気や表情といった部分は、生身のミュージシャンの存在意義につながります、観客の視覚にも訴えかける演奏を心がけましょう。

怪我への対策

力んで演奏すると怪我をしやすいので、対策が必要です。

力みによる怪我というと、腱鞘炎など関節の怪我や、人差し指の水膨れなどを想像する人が多いと思います。
それらの怪我は、特定箇所に耐久力を超えた負荷が加わることで発生します。
身体構造を無視した直線的なフォームで演奏すると、明確な支点が発生し、負荷が集中します。
回避するためには、手首の回転を利用した、支点を分散させたフォームで演奏する必要があります。

直線的なフォームと、回転を利用したフォームで、練習台を叩いてみました。

手首は直線的に動かすより、回転させる方が楽に動きます。
この動画では、大袈裟に直線・回転でフォームを変えてみましたが、実際はもっと動きがコンパクトになるので、直線・回転のフォームの差はわかりにくくなります。
ただし、両者の体への負担は大違いです。
直線的なフォームだと、スティックが打面に当たった衝撃の多くが手首の関節に伝わり、腱鞘炎の原因になりやすいです。

力む=怪我、ではありません。
力んだ結果、負荷が身体の特定箇所に集中した場合、怪我の原因になりやすいですのです。
力んだとしても、負荷を上手く分散することができれば、怪我が発生することはありません

参考になるプロの演奏

参考になりそうな、プロの演奏を紹介します。

The Drums – Let’s go Surfing

こういう演奏、ほんとに良いと思うんです。
文化祭で奇跡的にかっこいい演奏をしたバンドの雰囲気を再現しているみたいです。
間奏の音数が少ないアプローチで若干走る箇所とか、スタジオミュージシャンでは出せないバンドならではの良さが発揮されています。

LCD Soundsystem – North American Scum

右手のハイハットが素晴らしいですね。
スティックを指でしっかり握って8分音符を叩き続けている、としか言いようのない演奏ですが、良いフィールをキープし続けています。
拍の頭でハットをオープンにする時も8分音符を叩き続けるのがいいですね、そこを4分音符にすると、別のフィールになります。
こういう曲は、ドラマーとしての美学が問われます。
下手に派手なフレーズを入れたりすると台無しです。

Bill Stewart ,Peter Bernstein, Larry Goldings – Acrobat

https://www.youtube.com/watch?v=38lWhTQtiT8

ビル・スチュワートって、無機質な顔でゴツい音をどかーんと出すので、独特の迫力があります。
生演奏で見ると衝撃的で、シンバルをぶっ叩くような奏法などを平気で使用するので、ジャズドラムの概念が広がります。
この演奏でも、ここぞと言う時の攻撃力のあるスネアの音や、低音量で高剛性な音の使い方など、表現力が素晴らしいです。

リラックスした大きいストロークで叩くスネアの音が、あまり前に出てこないことにも気がつくと思います。
例えば6:30〜のあたりなど、脱力した状態では、いくら大きいストロークで叩いても、攻撃力の高い音は出せません。
ビルスチュワートも、この演奏では、ソロ間のクールダウンに使用しています。

その音がダメな音という訳ではありません、インパクトのあるアクセント音ではない、ということです。
その状態で、アクセントを目指して音量を大きくしても、うるさくなるだけです。

最後に

ドラムの表現力を広げるためには、一つの楽器からさまざまな音色を引き出せるようになる必要があります。
そのアプローチの一つとして、脱力はとても大切です。
しかし逆方向の、力みというアプローチを加えることで、表現の幅は倍になります。
是非とも活用してみてください。

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この記事を書いた人

名古屋市在住、30代後半のドラマーです。
高校生の頃にドラムを始め、就職して、結婚して、子供が生まれても、音楽への興味が尽きません。
最近はDAWでのトラック制作や、ブログの更新が主な趣味です。
コロナ禍が終わったら、仲間達とフェスにいきたいです。

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