MENU

そのフレーズを、楽曲が求めているのか、自分が求めているのか

桃井裕範さんの「ワンパターンになろうよ」というnoteの記事を読みました。
僭越ながらざっくり要約すると、即興演奏であっても、1つのアイディアを大切にし、ワンパターンな演奏になることを恐れすぎてはいけない、と言った内容です。
(全然伝えきれていないので、是非とも原文を読んでみて下さい。)

この記事を読んで連想した思い出があります。
自分の演奏者としてのレベルの低さを痛感した出来事で、今でも思い出すと恥ずかしい気持ちになります。
その思い出を書いていきます。

目次

自分が何を優先してドラムを演奏していたのか

就職して愛知に住むことになって数年が経った頃、2010年頃だと思いますが、名古屋の吹上にあるサタケドラムショップというお店に行った時のことです。
Beyond Bop Drummingという教則本を買ったあと、店員さんとの雑談中に、下記のようなやり取りがありました。

僕「セッションで共演者に反応するための引き出しが少ないので、フレーズの種類を増やしたいです。」
店員さん「何でも出来る必要は無いと思うけどなぁ。自分が今できるフレーズを磨いてみたら?」
※口調ははっきりと覚えていませんが、概ねこんな内容だったと思います。

そうかも知れないけれど、やっぱり色んなフレーズを叩きたいと思いながら、その日は帰りました。
しかし数日たっても店員さんの言葉が胸に残っていたので、なぜ僕は色んなフレーズを叩きたいのかを考えることにしました。
愛知県らしく、トヨタ式のなぜなぜ分析をちょっと真似して考えてみました。
(回数や細かい分析内容に対するツッコミはご勘弁願います・・・。)

①色々なフレーズを叩きたいのはなぜ?
→共演者の演奏に反応する引き出しを増やしたいから。

②反応の引き出しを増やしたいのはなぜ?
→色々なアプローチで反応できることを共演者に見せたいから。

色々なアプローチで反応できることを共演者に見せたいのはなぜ?
→自分が凄いプレイヤーであると証明したいから。

ここまで考えた時に、ハッとしました。
色々なフレーズを叩けるようになりたい理由が、自分の演奏力を誇示したいから、だと気づいたのです。
なぜなぜの過程に、セッションで出来上がる音楽への視点が抜け落ちています。
共演者との対話の幅を広げて、もっとみんなにとって面白いセッションにしていきたいから、などの理由であればフレーズを増やす練習も効果的だと思いますが、その時の僕の理由では、フレーズを増やしても独りよがりな演奏が加速するだけでした。

そして音楽に焦点を当てて考えると、僕はこれまで演奏がワンパターンだという理由で何らかの音楽を嫌いになったことはありませんでした。
自分が音楽よりエゴを優先して演奏していることに気づいて、恥ずかしい気持ちになりました。

ワンパターンな名演奏

ワンパターンな演奏について、紹介したい楽曲があります。

Steely DanのAjaという名盤があります。
詳しい解説は割愛しますが、このアルバムでは曲ごとに違うドラマー起用されており、それら全てが素晴らしい演奏のため、ドラマー必聴の内容となっています。
有名なのは、表題曲AjaでのSteve Gaddのドラムソロや、Home at LastでのBernard Purdieのハーフタイムシャッフルなどでしょうか。
僕は高校生の頃このアルバムに衝撃を受け、MDで繰り返し聞いていました。

アルバムの後半に、I Got the Newsという曲があります。
ドラマーはEd Greeneなのですが、とにかく同じようなフィルインを連発します。
フレーズだけ見ると、初心者が最初に覚えるような、いわゆるタカトンとその派生形ばかりです。
しかし繰り返されるタカトンが軽妙さとユーモアを生み出し、何度も聞きたくなる中毒性があります。

アルバムを最初から聞くと、テクニカルな演奏が続いた後この楽曲になるので、ワンパターンさが更に際立ちます。
初めて聞いた時、なんてセンスの良い演奏なんだと思いました。
高校生の頃の僕は、一つのアイデアを大切にした演奏の価値を知っていたのに、色んなテクニックを覚えて行く中で、それを忘れてしまっていたのでした。

最後に

この出来事があってから、楽曲が求めるフレーズを意識して演奏するようになりました。
楽曲がドラムに変化の少ないフィールを望んでいると感じた時は、恐れることなくシンプルなドラムパターンを繰り返すようになりました。
もしこの出来事が無ければ、自己中心的な、音楽より自分を優先するプレーヤーのままだったかもしれません。
サタケドラムショップの店員さんには感謝しかないです。
ありがとうございました。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

名古屋市在住、30代後半のドラマーです。
高校生の頃にドラムを始め、就職して、結婚して、子供が生まれても、音楽への興味が尽きません。
最近はDAWでのトラック制作や、ブログの更新が主な趣味です。
コロナ禍が終わったら、仲間達とフェスにいきたいです。

コメント

コメントする

目次
閉じる