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タイムマシンとしての音楽

先日、京都で開催されたSTAR FESTIVAL 2021に参加してきました。
テントで泊まった翌朝、外に出ると一面が霧に包まれていて、その中でENDURANCEというアーティストがアンビエントのライブを行っていました。
僕はこれまでアンビエントというジャンルを好んで聞くことは無かったのですが、早朝・屋外・霧の中というシチュエーションで聴くとなんとも幻想的で、初めて良さがわかった気がしました。
この思い出だけでも、STAR FESTIVAL 2021に行って良かったと思いました。

特定のシチュエーションにマッチした音楽を聞いた時、その思い出は一生の宝物になります。
音楽が好きな人は、多かれ少なかれ、そんな宝物を持っていると思います。

今回は僕が持っている、宝物のような思い出を紹介します。
その中でも、後から振り返ると案外印象的だったというか、その時はわからなかったけど結果的にずっと心に残っているような、そんな意外な思い出を中心に紹介します。

目次

中学生の頃、布団の中で Pink Floyd『狂気』

中学生の頃、モヤモヤして眠れない日が多くて、布団の中でイヤホンで好きな音楽を聞いていました。
なんとなくカッコいいという理由で洋楽を聞くことが多く、特にプログレッシブロックのような長尺の音楽を聞くことが多かったです。
お気に入りはPink Floydの狂気で、人間の内面に潜む狂気をアルバムで描き出すというコンセプトが中学生の僕に大ヒットして、繰り返し聞いていました。

アルバムの内容をしっかり聞くというより、断片的に聞き取れる単語や、うろ覚えの歌詞を思い出しながら、まどろみの中で空想するための触媒のような使い方をしていました。
和訳を読んでも歌詞の意味はよくわかりませんでしたが、なんと無く鬱屈とした自身の気持ちと波長が合う気がして、繰り返し聞いていました。
当時は未来が永遠に続くとしか思えなかったので、Timeの歌詞はどこか人ごとでした。

大人になった今では、構成のあざとさが鼻についてしまうことや、単純に自分が忙しいことが原因で、当時ほど『狂気』を集中して聞けなくなってしまいました。
漠然とした不安を抱えながら、考える時間はいくらでもあったあの頃だったからこそ、このアルバムに入りこめたのでしょう。
決して明るい思い出ではないですが、あの頃に何度も『狂気』を聞いていたことは、僕の音楽の原体験としてずっと残り続けると思います。

https://youtube.com/watch?v=hsr4PmeEocE

カナダのホームステイ先 George Clinton 『Atomic Dog』

学生の頃、CDを買うことはとてもカッコいいことで、その中でもジャケ買いは最高にカッコいいことだと思っていました。
ジャケットを見て、自分と波長が合うかどうかを判断して、決して安くない金額のフルアルバムを買うことは、純粋な自分のセンスが試されている気がして、よくトライしていました。
そしてよく失敗していました。

高校生の頃、春休みにホームステイでカナダに行く機会がありました。
元々音楽が好きだったことに加え、その頃にはドラムを始めていたこともあって、僕の興味は英語の勉強よりもカナダの音楽事情のみ。
空いた時間は現地のCD屋に足繁く通っていました。

ある日、カナダでもジャケ買いで自分のセンスを試してみようと思い様々なCDを物色した結果、Carl Craigの『abstract funk theory』というアルバムを買いました。
デトロイトテクノDJであるCarl Craigが影響を受けた楽曲を集めたコンピレーションアルバムなのですが、当時の僕はデトロイトテクノも何も知らなかったので、全てが未知のアルバムでした。

ホームステイ先に帰ると、ホストファミリーの親戚が遊びにきていて、ちょっとしたパーティーになっていました。
そこで僕も自己紹介を行うことになり、音楽が好きであることを説明すると、どんな音楽が好きかと聞かれました。
すると僕の手元にはタワーレコードの袋があったので、そこに入っているCDを聞いてみようという流れになりました。
ジャケ買いのアルバムなのでどんな楽曲が入っているかわかりません。
しかし僕の拙い英語力ではジャケ買いの説明も出来ず、そのアルバムはオーディオで再生されることとなりました。
そして流れてきたのが、George Clintonの 『Atomic Dog』でした。

第一印象は、「この音楽を好きか嫌いかわからない」でした。
チープなシンセ、妙に軽快なリズム、未知の音楽でした。
世間でカッコいいとされている音楽と違うことはわかったので、少し気まずくなりました。
でも聞いているうちに、僕はこの曲が多分好きで、これで音楽の趣味が判断されるのも悪くないという気持ちになりました。
ちなみにホストファミリーの反応は思い出せません、多分あまりよく無かったのではないかと思います。

このアルバムには他にB-52’sやRhythm is Rhythm(Derrick May)などが収録されており、愛聴盤になりました。
僕は今でも、少しチープな打ち込みのある音楽が好きなのですが、間違いなくこのアルバムの影響です。
今でも家にあります。
ジャケ買いでいっぱい失敗しましたが、このアルバムと出会えただけでも、ジャケ買いしてて良かったと思います。

徹夜明けに見る天気予報のBGM Earl Klugh『Good As It Gets』

高校生の頃、割とカジュアルに徹夜していました。
ゲームやテレビに夢中になっていると、時間はあっという間に過ぎてゆき、ついつい夜と朝の境目まで起きてしまうことが多かったです。
そこで寝ればいいのに、大抵はそんな気分にならず、かといってゲームをする元気も無いので、徹夜明けの早朝は繰り返されるニュース番組をボーッと見ていました。
そして、当時の天気予報のコーナーで流れていたのが、Earl Klughの『Good As It Gets』です。

徹夜すると、当たり前ですけど、次の日しんどいんですよね。
重い体を引き摺って学校に行くと、部活の朝練をしてる同級生がいたりして、この輝きの差はなんなのだと思ったりするわけですよ。
当時の僕は、吹奏楽部を退部し、放課後にバイトとバンドとゲームセンター中心の生活を送っており、真面目に部活をやっている友達へのコンプレックスがありました。
今振り返ると、一生懸命ドラムを練習したり、深夜にバンド仲間となか卯で意味もなく話をしたり、なかなか楽しい日々だったのですが、当時の僕にはその価値がわかりませんでした。
(深夜の牛丼チェーンで完食後にだらだら話をするのが日常でした、当時の店員さんごめんなさい。)
かといって生活習慣を改善する訳ではなく、なんとなくモヤモヤを抱えながら過ごしていました。

バンドなどで家に帰るのが遅くなるとついつい夜更かしをしてしまい、疲れた体で学校に向かい、授業もちょいちょい寝てしまう、そんな毎日でした。

今でも『Good As It Gets』を聞くと、高校時代の早朝の空気を思い出します。
イントロのドラムフィルから、穏やかなハーモニカのイントロがあり、そこにEarl Klughのリラックスしたギターが入り込んでくる一連の流れを聞くと、徹夜明けのリビングのソファーでボーッとしていた時の気持ちが蘇ります。
それは決してキラキラしたものではなく、どちらかと言えば鬱屈とした思い出のはずですが、今の僕にはその鬱屈さがとても懐かしく、愛おしいです。
大人になり、忙しくなり、日常のモヤモヤを効率よく処理して生活を回さなければならなくなった今では、思う存分自分のモヤモヤと向き合い、鬱屈とできた日々が輝いて見えます。

当時は、まさか徹夜明けに天気予報を見ている瞬間が貴重な思い出になるなんて、想像もしませんでした。
人生って不思議です。

最後に

今回紹介した楽曲って、好きな音楽や純粋に感動した音楽とはまた別で、特定の思い出と強く紐づいているので、聞くとタイムマシンに乗ったような気持ちになります。
当時は、まさかこの瞬間のことを、大人になってからわざわざブログに書くなんて想像もできませんでした。
もしかしたら、何気なく過ごしている今の日常や、そこで流れている音楽も、いつか振り返った時に宝物のような思い出になるのかもしれませんね。
そんな宝物をこれからも集めていきたいです

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この記事を書いた人

名古屋市在住、30代後半のドラマーです。
高校生の頃にドラムを始め、就職して、結婚して、子供が生まれても、音楽への興味が尽きません。
最近はDAWでのトラック制作や、ブログの更新が主な趣味です。
コロナ禍が終わったら、仲間達とフェスにいきたいです。

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